パニック障害診断

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パニック障害の診断 とは?パニック障害は、100人に1~5人が経験?!

公開日
更新日

 
執筆:須賀 香穂里(メンタルヘルスライター)
 
医療監修:株式会社とらうべ
 
パニック発作は、災害などのパニックを引き起こすような事態が発生していないにも関わらずパニックを起こしてしまう疾患です。
パニック障害のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、100人に1~5人が経験するという、あまり珍しくない疾患です(1)。
ここでは、 パニック障害全般について説明し、パニック障害の診断 検査について、詳しく説明します。
 
 

パニック障害とは

 
パニック発作がくり返し起こる病気をパニック障害といいます。パニック発作とは、これといった理由がないのに、突然急激に不安が高まる発作で、数分以内にピークに達し、数分間~数十分でおさまります。
 
アメリカ精神医学会が発行する「DSM-5:精神疾患の分類と診断の手引き」によると、次の13症状のうち、4つ以上の症状が上記の時間内に現れた場合に、パニック発作に該当します。
 
(1)動悸、心悸亢進(前胸部に鼓動を強く感じる状態)、心拍数増加
(2)発汗
(3)身震い、もしくは震え
(4)息切れ感や息が苦しい感じ
(5)窒息間
(6)胸痛や胸部不快感
(7)吐き気や腹部不快感
(8)めまい感、ふらつき、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
(9)寒気やほてり
(10)感覚麻痺、またはうずく感じ
(11)自分が自分ではない感じ(離人感)、現実ではない感じ(現実感消失)
(12)コントロールを失ったり、どうにかなってしまうことへの恐怖
(13)死ぬことへの恐怖
 
パニック発作の特徴的な点として、前ぶれがないことが挙げられます。何か特定の場所や状況で起こるということではなく、精神的に落ち着いている状況や睡眠中であっても起こることがあります。
 
また、頻度も人それぞれで、週に1度のペースで起こる人もいれば、毎日のように発作に悩まされる人もいます。さらに、再びパニック発作が起こることへの不安から、乗り物や人ごみを避けるようになる「広場恐怖」に発展することも珍しくなく、パニック障害患者の4分の3の人が経験するといわれています。
 
ただし、パニック発作が1度だけあったからといって、必ずしもパニック障害と診断されるわけではありません。
 
 

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パニック障害の原因

 
パニック障害の原因は、今のところ確定的なものはありませんが、今までの研究で脳のはたらきが関係していると指摘されています。
 
○偏桃体の過活動
偏桃体は、情動(好き・嫌い、快・不快)の処理をする上で重要な働きを持っていて、外界からのさまざまなストレスを脳のほかの場所に伝えています。偏桃体が過活動状態になると、偏桃体から情報を受けとる場所も過活動を起こします。これによって、交感神経が活発になり、パニック発作が起こると考えられています。
 
○青斑核(せいはんかく)の誤作動
脳幹にある青斑核は、危険を察知すると脳内神経物質である「ノルアドレナリン」を分泌します。ノルアドレナリンは、交感神経を活発化させていて、これによって、心拍数や血圧が上がり、身体を戦闘状態へと変化させています。パニック障害の患者は、この青斑核の誤作動によって、パニック障害で起こる諸症状を引き起こすと考えられています。
 
○セロトニン作動性の異常
中脳から分泌される脳内神経物質「セロトニン」には、ノルアドレナリンが過剰に分泌されるのを抑制し、心身をリラックスさせる働きがあります。セロトニンの分泌がうまく分泌されないことで、パニック発作をくり返し引き起こすといわれています。
 
 

どんな方法がある?パニック障害の治療

 
薬物療法
脳内神経物質であるノルアドレナリンやセロトニンのバランスを改善することを目的に次の薬を用いての薬物療法が行われます。
 
・SSRI(=選択的セロトニン再取り込み阻害薬):
パニック障害治療の第一選択薬(最初に治療で用いられる薬)です。セロトニンを増やす働きがあり、不安や心配、衝動、イライラなどを緩和します。これまでの抗うつ剤に比べて副作用が少ない一方、効果が出るまでには2~3週間かかります。
 
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬
ノルアドレナリンの分泌異常を抑え、緊張や不安を和らげる働きがあります。SSRIに比べて、副作用(ふらつきや眠気など)が強く、依存性も高い薬ですが、即効性があることから、SSRIの効果が出るまでの初期の治療で併用して用いられることが多いようです。
 
このほか、三環系抗うつ薬などが用いられることもあります。いずれの場合でも、治療を行う上では、医師の指示に従って服薬することが大切です。とくに服薬中の飲酒は、副作用を強めるリスクもあるので、注意しましょう。また、少し良くなったからといって服薬を止めると、症状をぶりかえす(再燃)や離脱症状が現れることがあります。自己判断での断薬や量の調整は絶対にやめましょう。
 
○精神療法
薬物療法によってパニック発作を抑えることはできますが、予期不安や広場恐怖の症状が強い場合には、精神療法も併用して行われることになります。パニック障害の精神療法で代表的な治療法は、次の2つです。
 
(1)認知行動療法
認知のゆがみに着目し、思考パターンや行動パターンを変えることで、症状を緩和する行動療法です。パニック障害では、最初のパニック発作は脳の異常によって起きますが、その後の持続的に起こる症状や、予期不安・広場恐怖は、認知のゆがみも関係しています。
 
たとえば、電車の中でパニック発作が起こると、その後も「電車に乗る=パニック発作が起こる」という認知のゆがみが起こり、不安になったり、電車に乗れなくなってしまいます。このような認知のゆがみに焦点を当てるのが認知行動療法です。
実際には、パニック発作が起こる状況を把握し、その状況でパニック発作が起こらないようにトレーニングをしながら、少しずつパニック障害を克服していきます。
 
(2)自律訓練法
自律訓練法はリラックスをするための方法のひとつで、6つの基本公式(1. 両足両腕が重たい、2.両手両足が温かい、3.心臓が規則正しく打っている、4.楽に呼吸ができている、5.お腹が温かい、6. 額が冷たくて涼しい)をイメージしながら行います。これによって、リラックス状態が作られていき、パニック発作を起きにくくしていきます。ただし、最初からうまく実践することは難しいため、主治医などの専門家の指導のもと、行うようにしましょう。
 
 

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パニック障害にかかったら

 
パニック障害にかかってしまったら、まずは医師の指示のもと、適切な治療をうけることが大切です。さらに、日常生活ではできるだけストレスをためないようにすることも大切です。
 
○日常生活での注意点
ストレスをためないようにするには、生活習慣を整えることがとても大切です。まずは規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとるように心がけましょう。また、カフェインは、交感神経を活発化させる効果があるので、摂りすぎには気をつけましょう。このほか、自分なりのリラックス法を見つけることもストレスをためない方法のひとつです。
 
○仕事を行う上での注意点
パニック障害になると、通勤電車に乗れなくなったり、密閉された会議室にいられなくなったりと、仕事に支障をきたすことがあります。
 
まずは、どのような状況で症状が現れやすいのかを把握し、対策をたてましょう。とはいっても、ご本人の努力だけで解決することが難しい問題も多々あるでしょう。そのような場合には、上司や同僚に相談し、勤務時間や場所などの変更も検討しましょう。
 
 

パニック障害の予防法

 
パニック障害は、精神的にストレスを感じているときに起こりやすくなるということはわかっています。ですから、ストレスをためすぎないように注意することが一番の予防法といえるでしょう。そのためには、やはり生活習慣を見直したり、日ごろからストレスを解消する方法を身につけておくことが大切です。

 
 

パニック障害の主な症状とは

 
「パニック」とは何か不測の事態が起こった時に陥るものですが、パニック障害の発作は「思いがけない時に突然起こる」ものです。個人差はありますが、このような発作は10分経たない間にピークとなり、30分程度で治まることが多いようです(2)。
このようなパニック障害の症状は、大きく分けて3つに分類できます。
 
 

パニック発作

まずひとつ目は「パニック発作」と呼ばれるものです。パニック発作はパニック障害の必須症状といえます(3)。
パニック発作は主に、
 
・動悸、息切れ、息苦しさ
 
に何か詰まったような窒息感
 
・胸やおなかの不快感
 
・発汗、体の震え、寒気、熱っぽい
 
・めまい
 
などの身体症状と共に、「心臓発作ではないか」「死ぬかもしれない」「気が狂ってしまう」などと思う恐怖を伴います(3)。
 
 

予期不安

これは、将来において発作が起こるのではないかと心配になってしまうことを指します。「予期不安」は持続性で、再発への不安が原因となっているので、パニック発作の時に生じる不安とは区別されます(3)。
 
 

広場恐怖

「広場恐怖」は予期不安によって、発作が起きた時にそこから逃げられないかもしれない、大勢の前で恥をかくかもしれないなどの不安を呼び起こし、発作のおきそうな場所や状況を避けようとする行動のことです(3)。
パニック障害を発症する人は、たいていの場合この広場恐怖を伴っており、ひどい場合には外出できないなど、生活に支障をきたすこともあります(3)(4)。
 
 

パニック障害の診断 ・検査(3)

ここまでパニック障害の症状や原因について解説してきました。
実際にパニック障害の疑いがある場合、いったい何を基準に「パニック障害である」と診断されるのでしょうか。
ここでは、専門家が用いている診断基準を紹介します。
パニック障害であると診断されるまでには、主に5つのステップがあります。
 
第1のステップは、「パニック発作」があることです。以下の表を見てください。
 
パニック表1
 
この表に記した症状のうち、4つ以上の症状を伴った発作が突然現れ、10分以内にピークに達する場合、それはパニック発作であると診断されます。
 
第2のステップは、パニック発作と診断されたその発作が「予期しないパニック発作」であることです。
つまり、前触れもなく突然発作が起こる、といった状況が複数回あった場合、第2の基準は満たされます。
 
第3のステップは、その発作が他の病気によるものではないと認識することです。
パニック発作のような発作は心血疾患や呼吸器疾患など、他の身体疾患でも起こり得るものなので、鑑別が必要なのです。
 
第4のステップは、「予期不安」などの不安症状が1か月以上続いているかどうかの確認です。
「また発作が起こるのではないか」という不安以外に、「気が狂うのではないか」「心臓発作ではないか」という不安から仕事が手につかないなど、実生活に支障が出る場合、この基準を満たします。
 
そして、最後のステップは「広場恐怖」があるかないかです。
以下の表2は、「広場恐怖」の診断基準を示しています。
 
パニック表2
 
「パニック障害」は、以上のようなステップを経て診断されます。
もしパニック障害の症状に心当たりがある方は、ご紹介した診断基準に照らし合わせてみてください。
症状がパニック発作であるかどうかの参考となります。ただし自己診断はあくまで参考ですので、基準に当てはまる場合は専門機関の受診をお勧めします。パニック障害の治療について詳しく解説している「パニック障害の治療は何科に行けば良いの?どのような治療が行われるの?」も併せてお読み頂ければ幸いです。
 
 

子供のパニック障害の診断

 
子どもの不安障害は意外に多く、児童の約1割が何らかの不安障害を持っているといわれています。子供の不安障害でもパニック発作が起こる可能性があります。通常、パニック発作とは、不安対象への反応として起こります。
 
容易に逃げ出すことのできない場所へ閉じ込められているという恐怖(広場恐怖)を抱いている子供は、混み合った講堂の中程の列に座っていると、パニック発作を起こすことがあります。パニック障害の子供の多くには広場恐怖も認められます。喘息などの身体の病気もパニック発作を引き起こすことがあります。
 
分離不安の子供は、親が離れるとパニック発作を起こすことがあります。初めて母から分かれて保育園に置いておかれるときに泣く子は多いですが、これがかなり長期に続けば病的であるといえるでしょう。パニック障害は幼少時に分離不安があった人が多く、またパニック障害の子どもにも分離不安障害が多いという報告があります。
 
以下にパニックになりやすい子供の特徴を6つ紹介します。
1.人見知りが強い
2.お母さんと離れられない
3.ある特定のものへの恐怖心
4.「もしも…だったら」の予期不安で体調が悪くなる
5.強迫観念が強い
6.対人恐怖がある
 
しかし時間が経つにつれて、子供は発作と関連がある状況を避けるようになります。この回避行動が広場恐怖につながることがあります。広場恐怖により子供は学校を嫌がるようになったり、ショッピングモールに行きたがらなくなったり、その他特有の行動を取るようになります。
 
子供がパニック発作に襲われた時の体の症状は大人と変わりません。
多くの場合パニック障害は、明白な理由がなくても悪化したり改善したりします。症状が自然に消え、また数年後に再発することもあります。また子供がパニック障害を発症してしまうと、不登校や引きこもり、学習障害などに繋がることがあり、子供の将来に大きく影響を与えてしまいます。そのため、家族のパニック障害への理解と早期発見が重要です。
 
参考(外部サイト)
http://merckmanuals.jp/home/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%AE%89%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html#v823712_ja
 
 
【参考文献】
(1) パニックの心理学(こころの散歩道) 新潟青陵大学
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/saigai/2011sanrikuoki_eq/panic.html
(2) 医療法人 和楽会 http://www.fuanclinic.com/byouki/a_01.htm
(3) 竹内龍雄(不安・抑うつ臨床研究会)(2008).パニック障害とはどんな病気か パニック障害はここまでわかった 株式会社日本評論社 pp.5-16
(4) パニック障害ってどんな病気? 監修:東京大学医学教育国際協力研究センター教授 北村聖
http://www.myclinic.ne.jp/imobile/contents/medicalinfo/gsk/top_mental/mental_002/mdcl_info.html
 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが・かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている
 
 
<監修者プロフィール>
株式会社とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 
 

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パニック障害の概要について医師が説明した以下の動画もご参考にして頂ければ幸いです。

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